【試し読み】桜町商店街青年部ただいま恋愛中! 8: Tempest

桜町商店街シリーズ
購入
入江(いりえ)が、『青い顔で昼夜かん間だん断なく働いている』、と聞いた杉山(すぎやま)は、足早に桜町商店街を歩いていく。ハロウィン飾りで彩られた町の平和な風景には、似合わないこと、この上ない。
(また、あいつは……)
苛立ちながら肩で風切って足早に歩く、白スーツの男の姿を見て、商店街のまばらな通行人たちが、「ひっ」と小さな声を上げながら、杉山に道を譲った。
黄昏時の閑散とした商店街を行く、長身の白スーツ。髪を後ろに撫でつけた格好の、人相の悪い中年男。耳には刃物でついたと思しき傷がある。一目で、その筋の人間だとわかる格好だ。
桜町商店街の飴屋『うさぎの飴屋』の店主、いり入え江しおり栞が、倒れそうになりながら働いているというのを杉山に告げたのは、杉山の舎弟、なか中田天空(なかたしえる)だ。天空と書いて『シエル』。ヤクザにもついにキラキラネームの波が押し寄せてきやがったかと、背筋が寒くなるのを杉山は感じている。そもそも、こんな時代にヤクザが商売になるかと言えば、それは否だ。
それはともかく。
天空は、去年、入江に迷惑を掛けた。入江の店前にあった、傘立てを壊したのだった。その関係で、入江とは親しくなった。
(まあ、親しくっていうのは、ちょっと違うんだろうが……)
少なくとも、入江は、杉山を嫌っては居ないだろう。
でなければ、あの、人を食ったようで、警戒心の強い男が、自分のテリトリーに他人を入れるとは思えなかった。
(というより、あいつは、多分、俺に、気があるだろ)
人をおちょくるのが趣味―――のような所はあるのだろう。だが、それだけではないはずだ。
イジり方が、違う。天空より、桜町の他の仲間達より、杉山に対するイジり方が、一番酷い。それだけ聞いていれば、小学生か、と言いたくなるが……。
(あいつは、他人に弱みらしい弱みは見せねぇからなぁ)
倒れるのだって、自宅で、一人で倒れるだろう。体調不良を、他には見せないはずだった。
足早に町を歩きながら、杉山は、飾られた、オレンジ色をしたパンプキンや、黒猫の飾りものを見やった。ハロウィンの飾りものだ。
ハロウィンくらいは、ヤクザの杉山でも分かる。有名なヤクザが、ハロウィンのお菓子を、近所の子供達に配布しているというのも聞いたことがある。
お菓子を配る日というのが、杉山の認識だ。若いものたちは、コスプレをして楽しむ日と言うかも知れない。
だが、この『お菓子を配る日』の為に、飴屋の作業がピークになっているのは、容易に察することができた。
「店長、本当に、私、帰って大丈夫ですか? うちは、残業しても平気ですよ?」
心配そうな声が聞こえる。声には聞き覚えがあった。
飴屋のパート従業員の中年女性だった。小柳と言ったはずだ。
「大丈夫だよ~、お客さんも来ないだろうし。あとは、少しだけ作業して、僕も仕事を終えるから大丈夫だよ~。お疲れ様~」
へらっと笑っているが、声に疲れが滲んでいる。
「本当に、ダメだったら、天空くんとか、天空くんのアニキさんとか、呼んでくださいよ?」
思わぬところで名前が出てきて、ドキッとして、思わず物陰に隠れてしまった。『天空のアニキ』とは杉山のことだ。
「なんで、天空くんと杉山さん?」
「お二人とも、店長のこと、心配してますよ」
「そうか……」
でもねと、入江が呟く。その声は、杉山が今まで聞いたこともないほど、重たくて暗いものだった。
「僕ね、ヤクザって嫌いなんだ」
パタン、と飴屋のドアが閉ざされる。そこに近付くことは出来なかった。小柳にも見つからないように……と、建物の影に隠れて、タバコを吸おうとしたが、やめておいた。気付かれても、面倒だ。
(ヤクザが、キライ……ねぇ)
ヤクザを好きな人間など、そう、居ないだろう。だが、なにか、胸の底が、ざらつくような気分になりつつ、そのまま、杉山は部屋へ戻った。
◇◇◇
『僕ね、ヤクザって嫌いなんだ』
その言葉が、あの時から頭の中を、ぐるぐると回っている。
(まァなあ……、ヤクザなんか、誰からも嫌われてるって言えば、そうなんだがなぁ)
杉山は、火の付いていないタバコを弄びつつ、小さく溜息を吐く。それを、
「なんだ、杉。……男の溜息なんざ、聞きたかねェなあ」と、からかわれた。
「オヤジ」
顔を上げると、オヤジ―――きり霧たて立組の組長・やま山だ田いち一ろう郎が、にやにやと笑っている。
「オンナか。最近、なにかに入れあげてるって、話は聞いたが」
「オンナっけなんか、しばらくありませんよ。大体、この田舎のどこに、オンナがいるんだか」
「行くとこにいきゃあ、居るだろ」
組長は、茶碗に注がれた茶をゆっくりと啜る。むさ苦しい組事務所ではなく、組長の自宅なので、組長ものんびり過ごしているようだった。
「ところで、オヤジ。客が来るって……どこのどなたなんです」
「あっ? ああ、まあ、知り合いだ」
組長が言葉を濁したので、杉山は、それ以上、追求は出来なかった。「そうですか」とだけ呟いて、早く客が来てくれないものか、思いはじめる。
「最近、町に良く出入りしてるらしいな」
町、と言えば桜町だ。桜町商店街。
「まあ、若いのが、役に立たないんでね……」
「そうかい。……他に目当てがあるように思えたんだが」
目当て、と言われてドキリと杉山の胸が跳ねる。目当てという言葉は適当ではないが、とりあえず、目的はある。飴屋の所へ行くためだ。『人を食ったような態度の、スカした飴屋』というのが、杉山の評価だが、ヤクザをヤクザと知って、おちょくるような言動をしているから、どうにも、気になった。
腕っ節にも、多少覚えがあるような立ち姿だとは思う。杉山は、商売柄、人を殴ることが出来る人間と、そうでない人間が纏う空気感というのは、嗅ぎ分けることが出来る。それでいうならば、間違いなく、入江は、人を殴ることが出来る方の人間だと思う。
「ヒマなんですか、オヤジ」
「そりゃあ、ヒマだろ。何にもねぇ。シノギもネェしな」
タバコを取りだしたので、そっとライターで火を近づけて、バカラの灰皿を差し出した。
「お前もやったら?」
「じゃあ、遠慮なく」
組長の許しが出たので、タバコに火を付けた。組長は、庭を見やっている。日本邸宅のこの家は、小さいながらもそれなりの庭を持っている。ハロウィンも近付いた今、色づいた紅葉が地面に落ちて、赤い絨毯のようだった。
「……オヤジ、お客がきましたぜ」
案内に連れられた人物は、杉山も見知った人物だった。直接話をしたことはなかったが、桜町に居ればよく見かける顔だった。
「おまえ……っ米屋じゃないか……っ!」
桜町再生プロジェクトの発起人にして、桜町べい米こく穀てん店の店主。に二かい階どう堂かず和き樹、その人だった。
(なんで、こいつが、ヤクザの家に出入りしてるんだよ)
「ああ、入江さんのところに出入りしている、ヤクザさんか。……俺は、米屋の二階堂和樹だ。今日は、組長さんに米の配達に来た。週に一度、精米したての米を配達しているが、なにか?」
ヤクザに囲まれて、ヤクザの家に居るというのに、二階堂和樹の態度は、堂々としたものだった。
(入江といい、こいつといい、なんなんだ、桜町商店街青年部ってのは……)
普通、ヤクザに囲まれたら、ぶるぶる震えたり、ビクビクしたりするものだ。
「杉、押さえろ。ヤクザだって米ぐらい食うだろ? ……二階堂さんは、好みの精米具合で新鮮な米を届けてくれるんだよ」
組長が、笑う。
「へー、今まで、そんなに米にこだわりがあるなんて、知りませんでしたよ。オヤジとは、付き合いが長いと思ってましたけどね」
「ああ、付き合いが長くても―――何もかも知ってる訳じゃねぇだろ。おい、二階堂さんに、茶ァくらいださんか」
客用の、ふんわりした座布団が敷かれている。そこに、ためらいなく、和樹は座った。
「二階堂さんに、ハジキみせても、動じやしねぇからな。お前らより、気合いが入ってるんだよ、この人ァ」
「カタギなんですか、その人」
「失敬な。俺は、ただの善良な……町のお米屋さんだが? ……ただ、拳銃を持ったギャングに拉致された経験くらいはある」
「俺にだって、そんな経験はねぇよ」
その拉致の経験の間も、おそらく、この二階堂和樹という人物は、この調子だったのだろうとは推察出来た。
「お前、桜町を危険にさらそうとしてるんじゃねぇだろうな」
二階堂和樹が、顔を上げた。強い光を宿した瞳が、杉山を射る。
「危険は迫っているんだ。俺は、その危険から、町を守りたいだけだ。……だからこそ、組長さんにも、顔を通しに来ているだけで。それなら、俺たちの利害は、一致しているはずだ」
「守る……? 一体何のことなんだよ。だいたい、守るって言うなら、お前の企画の、青年部のハロウィン……あれ、一部の店のヤツだけ、負担が来てるんだろ?」
和樹の眉が跳ね上がった。
「本当か?」
「……飴屋が、青い顔をしてるって聞いたぞ」
「入江さんか。……気に掛けておく」
気に掛けるじゃなくて―――と文句を言おうとした時に、こほん、と咳払いが聞こえた。そういえば、組長の客だったのに、遮って話をしていた。
「失礼しやした、ご無礼を」
畳に額を擦り付けて謝ると、組長が「入江、ねぇ」と小さく呟く。
「あっ、いや……そいつは」
「まあ、そいつのことは、なにかあっても、放っておけ」
「えっ? なにか、あるんですか、あいつ……」
「詮索も無用だ。……桜町商店街には、手を出すな。たまに、ちょろちょろするのは構わんが……。俺は、ちょっと、二階堂さんと話があるんだ。お前らは席を外せ」
意味がわからない。
「米屋と、なんの話があるんですか」
「あぁっ? 米屋に話なら、米のことだろ。正月の餅の用意も相談しなきゃならねぇし、明日の朝飯の、ご飯のお供の相談もしたいんだよ」
「ちなみに、米屋は、ご飯のお供に何を提案するんだよ」
問うとややあって、和樹は「そうだな」と小さく呟いてから、迷いない顔をして言い切った。
「今日持ってきた米は、淡泊な『はえぬき』だからな、ご飯のお供に食べるならば、甘い『ミルキークイーン』を勧める」
ご飯のお供に提案するのが新たなご飯というのは、どういうことなんだよ、というツッコミを入れることは出来なかった。組長が、杉山を睨み付けていたからだった。
桜町は、ひとけ人気が無くて、実店舗のほうに来る客は、一日に一人くらい。それで商売になっているのかというと、実は、商売には、なっている。ネット販売がメインの『ウサギの飴屋』は、売り上げの大半が通販、それと、ショップに卸している分などになっている。
リアル店舗をオープンしたのは、在庫を置く場所と作業場所の確保。そして―――リアル店舗が『ある』という、顧客向けの安心感の為だった。
インターネットだけの店舗よりも、リアル店舗がある店のほうを、客は『信用』するらしい。
桜町に出店する前に、一度や二度、ポップアップストアをやったことがあったが、その後の売れ行きが目に見えて激増したので、栞は驚いたものだった。
商売に関するノウハウは、一切ない。
失う物も何一つない身軽な立場だったから、スタートアップも、さまざまなこともすべて、成り行きのまま、面白そうだと思う方を取っていって、桜町まで流れ着いた。
(……ああ、そういえば、おとといだった……)
カレンダーを見て、栞は思い出す。十月に入ってから、商店街とネット通販、そして店舗卸の分の、キャンディの生産がピークになっていた。年間の売り上げの三割近くをここでたたき出してしまうので、やはり気は抜けないが―――仕事に忙殺していて、大切なことを忘れていた。
時計を見やる。すでに、午後七時近かった。
「陸斗くんに電話しよ……」
荷物の山の中からスマートフォンをたぐり寄せて、商店街の花屋の息子、あお青やぎ柳りく陸と斗に電話を掛ける。
「あー、もしもし。入江だけど」
『こんばんは。珍しいですね。……あ、明日、配達いらなくなりました?』
栞の店には、週に一度、陸斗の花屋から花を配達して貰っている。
その配達が、明日の予定だった。
「あっ、それはいつも通りお願いしたいんだけど……今から、ちょっと、お花……花束? 用意して貰えないかなって」
『花束、ですか?』
陸斗が、不思議そうな声を出す。
「うん。いつも、お母さんにお願いしてるから……陸斗くんのお母さんに聞いて貰えば、すぐ解ると思うんだけど……今月、ちょっと忘れてて」
ははっと笑うと、陸斗は、予約表をたぐっているようで『ああ、わかりました。今日は、母が不在なので、僕がお作りしますね』と請け負ってくれた。
「えっ? お母さん、こんな時間にご不在?」
『ええ。……き綺ら羅ぼし星ワタルのコンサートに行っちゃいました』
綺羅星ワタルは、人気演歌歌手だった。KーPOPアイドルのような、派手目のお化粧に、抜群の演歌歌唱力という、ミスマッチさがウケて、一躍人気者になっている。その上、元々お笑い芸人を目指して、養成所にいたというので、笑いのセンスも抜群という、世代を超えて愛される歌手だった。
「綺羅星ワタル、好きなんだ……」
『うちの母の部屋……、推し活がヤバいです。綺羅星ワタルの、祭壇が作られてます』
「まあ、お推しがいる人生のほうが、楽しいんじゃない……?」
『ちょっと怖いですけどね。桜町にも来てくれないかな~とか、桜町に来たら、お花出すのに~とか普通に妄想がダダ漏れで怖いです』
「ご、ご愁傷様……だね。でも、桜町って、コンサート出来るような場所ないでしょ?」
『そうなんですよね。夏祭りの時だって、お寺の境内を借りてるくらいだから。うちの町で一番広い場所って、学校じゃなくて、お寺なんですよ』
たしかに、『広域避難所』に指定されているのも、桜町小中学校ではなく、神櫻寺のほうだった。桜町小中学校の校庭は、幼稚園の運動場に見まごうほどに小さいし、体育館も手狭なのだ。この町に越してきて、一応、避難場所などは一通り確認した栞だったが、その辺は、少し驚いた。
『広い土地は、全部、村木精密機械のものなんですよ』
「でも、事業所縮小したんでしょ?」
『ええ……。昔は、うちも、毎月月末になると、定年退職の人のためのお花とか、凄い数を納品してたんですけど……今じゃ、月に一人二人です。会社員の人たちも、定年まで勤め上げる感じじゃなくなってるし……寂しいですよね』
「そうだね……少しでも、町が活性化されれば良いけど……。ああ、じゃあ、三十分くらいしたら、お花取りに行くから」
『はーい、お待ちしてます』
陸斗は明るく請け負って、電話を切る。栞が出向く時間には、本来、花屋は閉店時間だ。悪いことをしたとは思うが、明日、ちゃんと覚えていられる自信はない。日々、仕事に忙殺されていて、日常の色々なことが抜け落ちている。
カレンダーには、毎月『十八日』に丸印が付けられている。今日は、二十日だ。
「二日も、忘れてたなんて……」
どうかしている、と思いつつ、そういえば、と栞は、はた、と気がついたことがあった。
三日と開けずに店に出入りして居る、中田天空という、ヤクザの舎弟が、ここ最近、ぱったり店に顔を出さなくなったのだった。
(たしか……)
最後に来たのはいつだったか。期間限定フェアの、最初の発送の時、
『入江のアニキっ! 俺、二階の作業場で、梱包手伝うっスよ!』
と発送を手伝ってくれたのだ。その発送が、今月の六日のはずだった。
それを最後に、ここに来ていない。となると、二週間。
「……ヤクザのくせに、素人の手伝いしてるんじゃネェよ……って、杉山さんにでも怒られたのかな」
そう呟きながら、どこか違和感があった。栞が知る杉山ならば、
『おら、どんだけ仕事が残ってやがるんだ』
と言いながら、手伝ってくれそうだったからだ。そういえば、その、杉山の姿も、しばらく見ていない。腑に落ちない気分になりながら、栞は支度をして外へ出る。
花屋に立ち寄った入江は、陸斗が作ってくれた花束を受け取って代金を支払った。
「営業、終わったところなのにゴメンね」
「いえ、大丈夫ですよ。……それにしても、今からですか? もう遅いですけど」
花を見やりながら、陸斗は聞く。菊を中心にした、地味な花束―――仏花だった。
「ああ……まあ、遅いけど安全でしょ?」
「そうですかぁ? 僕は、夜のお墓なんて、頼まれても行きたくないですけど」
「誰にも会いそうにもないし、丁度良いよ」
それじゃ、と立ち去ろうとした栞に、陸斗がおずおずと声を掛ける。
「……あの」
「なに?」
「どなたの、お墓なんですか? ……毎月、ちゃんとお参りしていらっしゃるみたいですけど」
栞は、ぴたり、と動きを止めた。それから、一呼吸置いて陸斗に教えることにして、口を開く。陸斗は周りに言いふらすような人ではないし、仮に、言いふらされても困る内容ではない。
「母の……母のお墓なんだ。毎月十八日が祥月命日」
「えっ、じゃあ、お母さんって、桜町の人なんですか?」
「うん。商店街の人じゃなかったけどね。この辺の人だったみたいだよ。僕も、小さい頃、何度かここに遊びに来てたんだけど……もしかしたら、その時に、今の青年部の人たちとすれ違ってたかも知れないね」
「もし、そうだったら、面白いですね」
陸斗は笑う。吊られて、栞も笑った。
「僕も、桜町で育っていたら、もうちょっと違う人生になったのかな」
思わず呟いた言葉を聞いた陸斗が、目をまん丸にして瞬かせる。
「入江さんって、なんでも出来るようなイメージですけど」
「実はね……会社勤めが長く続いたことがないんだ。お勤めに向く人と向かない人っているよねぇ」
自嘲気味に笑うと、陸斗が慌てて「僕も、多分っ! 会社勤めは、ムリだと思いますっ! だから、幼なじみの未来とか、ちゃんと会社勤めしてて偉いなーって思いますよ」とフォローを入れる。
気を遣わせたな、とは思うが、栞も、うっかり口が滑った。仏花のせいだろう。
「それじゃ、僕は遅くなっちゃうから、この辺でお暇するね。お花、ありがとう」
「いいえ。……本当に暗いから、気を付けてくださいね」
陸斗の明るい声を背中に受けつつ、栞は歩き出した。