
猫は本棚の上で恋をする
著者:灰音シン
発売日:2025年7月30日
不器用な猫店主と、まっすぐな彼。本の匂いの中で、二人の世界がそっと重なる。
市立図書館のインターン・佐久間陽は、地域連携プロジェクトで古書店「月の舟」を訪れる。そこにいたのは、人嫌いで無愛想、まるで気まぐれな「猫」のような店主・黒川朔だった。門前払いされながらも諦めない陽は、週に一度、半ば強引に店に通い始める。
最初は冷たくあしらわれるばかりだったが、一通の手紙と一冊の古書が、二人の間に小さな変化をもたらす。本の返却をきっかけに、黒川の秘められた優しさに触れる陽。そして、図書館との連携イベント「古書と物語の夕べ」の準備を通じて、二人は閉店後の静かな書店で時間を共有し、少しずつ心の距離を縮めていく。
「人間は苦手でも、本を介せば、少しだけましになれる」。孤独を知る黒川がそっと明かした過去に、陽は確かな温もりを感じる。言葉を交わし、触れ合う指先、そしてイベントの夜に交差する視線……。やがて陽は、自分の胸に芽生えた確かな感情に気づく。
インターン期間が終わり、二人の関係は途切れてしまうのか? 猫のように警戒心が強く、素直になれない黒川の心は、陽のまっすぐな想いを受け止めることができるのか? 本の匂いに満ちた古書店で、静かに、そして確かに育まれる不器用な二人の恋の行方を、どうぞ見届けてください。