おまけSS:湯けむり攻防戦

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「桃瀬ー、風呂沸いたぞー!」
リビングで雑誌を読んでいた桃瀬に、脱衣所から赤羽の明るい声が響いた。時刻は夜の十時過ぎ。シェアハウスの住人たちがそれぞれの時間を過ごす中、二人はそろそろ寝る準備に入る頃合いだった。
桃瀬は雑誌から目を離さずに、「ああ、そうか」とだけ答えた。別に急いで風呂に入るつもりはない。むしろ、一人でゆっくり浸かりたい気分だった。
「なぁ、桃瀬も一緒に入ろうぜ!」
赤羽は諦めずに、今度はリビングまで顔を出して誘ってきた。その顔には、いつものいたずらっぽい笑みが浮かんでいる。
桃瀬はうんざりしたように顔を上げた。「またか。何度も言ってるだろ、俺は一人で入りたいんだ」
「えー、なんでだよ! せっか一緒に住んでるんだから、たまには一緒に入ろうぜ! 背中も流してやるし!」
赤羽はそう言いながら、桃瀬に近づき、その肩に腕を回してきた。その距離感が、桃瀬には少し近すぎる。
「嫌だ。お前の泡だらけの手で触られるのはごめんだからな」
桃瀬は赤羽の腕を払い、立ち上がって脱衣所へと向かった。赤羽は不満そうに後を追ってくる。
「けちくさいなぁ、桃瀬は。別に変なことしないって!」
「お前がそう言う時の『別に』ほど信用できない」
桃瀬は脱衣所のドアを開け、中に足を踏み入れようとした。その瞬間、背後から赤羽が勢いよく桃瀬の背中に抱き着いてきた。
「うわっ!」
予期せぬ抱擁に、桃瀬はよろめいた。赤羽はそのまま桃瀬の体にしがみつき、耳元で甘く囁いた。
「お願い、桃瀬……一緒に入ろう? 今日、ちょっと疲れたんだ……」
普段は強引な赤羽の、珍しく弱気な声に、桃瀬の心は少し揺らいだ。振り返ると、赤羽は少し寂しそうな表情をしている。
「……別に、お前が大人しくしているなら、構わないけど」
桃瀬が渋々ながらそう言うと、赤羽の表情は一瞬で明るくなった。
「やった! 約束だぞ! 変なことしない!」
そう言うと、赤羽は勢いよく自分の服を脱ぎ始めた。桃瀬は小さくため息をつきながらも、自分の服を脱ぎ始めた。
浴室に入ると、湯船からは湯気が立ち上り、温かな空気が二人を包み込んだ。赤羽は待ちきれないように湯船に浸かり、気持ちよさそうに目を細めた。
桃瀬も少し遅れて湯船に身を沈めた。じんわりと温まる湯が、一日の疲れを癒していくようだ。隣に座る赤羽は、約束通り大人しく湯に浸かっている。
しばらく静かな時間が流れた。湯の音だけが響く中、ふと赤羽が口を開いた。
「なぁ、桃瀬」
「……なんだ」
「やっぱり、背中流してやろうか?」
桃瀬は一瞬迷ったが、赤羽の申し出を無下にするのも気が引けた。それに、少しだけ背中が凝っている気もする。
「……まあ、頼んでやってもいいけど」
桃瀬がそう言うと、赤羽は嬉しそうに桃瀬の背中に手を伸ばした。泡立てたタオルで優しく背中を洗い始める赤羽の手に、桃瀬は小さく息をついた。案外、悪くないかもしれない。
温かい湯に浸かり、赤羽に背中を流してもらう。そんな穏やかな時間が、二人の間には流れていた。湯気が立ち込める浴室の中で、二人の距離は、いつもよりほんの少しだけ近づいたような気がした。
「……気持ちいいか?」
赤羽の声が、耳元で囁かれた。桃瀬は頷こうとしたが、その直後、赤羽の手が背中から桃瀬の腰へと滑り落ちた。そして、そのまま、つるりと股間へと伸びてくる。
「っ……な、何してんだ!」
桃瀬は驚いて声を上げた。赤羽は悪びれることなく、ニヤリと笑った。
「なんだよ、気持ちよさそうにしてたから、もっと気持ちよくしてやろうかなって」
赤羽の指が、桃瀬を優しく包み込む。温かい湯の中で触れられることに、桃瀬の体は敏感に反応した。
「バ、バカ! やめろって言っただろ!」
桃瀬は慌てて赤羽の手を掴んだが、赤羽は離そうとしない。それどころか、指先をわずかに動かし、桃瀬の敏感な部分を愛撫し始めた。
「んんっ……!」
快感に、桃瀬の喉から甘い声が漏れた。赤羽は満足げに笑い、湯気の中で桃瀬の耳元に唇を寄せた。
「ほらな? 桃瀬も、本当はもっとしたいんだろ?」
その言葉に、桃瀬の顔は湯気よりも赤く染まった。悔しいけれど、赤羽の言う通り、体の奥が疼いているのを隠せない。湯気が立ち込める浴室の中で、二人の攻防は、まだ終わりそうになかった。