おまけSS:「正式同棲開始編」
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購入
「今日から、この部屋はふたりの家になる」
正式に同居を決めた翌日、
修輔は街の家具屋へ向かった。
横には当然のようにエクエルドがいる。
「修輔。これはどうだ?」
「ベッドか?」
「耐久性があり、寝心地も良いらしい」
「……いや、これダブルじゃねぇか」
「あなたと寝るのだから、当然だろう?」
「っ……!」
(なんでそんな自然に言うんだよ……!)
顔を赤らめる修輔を見て、エクは少し嬉しそうに口元を緩めた。
「俺は、あなたの隣で眠るのが好きだ」
「……じゃあ、それでいいよ……」
結局、ふたりはダブルベッドを購入した。
他にも、エク用の寝間着、調味料の棚、二人で座るソファ、湯呑みが二つ入る湯飲み籠……。
「なんか……新婚みたいだな」
「新婚?」
「いや、こっちの世界にそういう言葉があるか知らんけど……なんか、そういう雰囲気だろ」
「……新婚か」
エクはその言葉を静かに反芻し――頬を、ほんの少しだけ赤くした。
「悪くない響きだ」
同居初日の朝。
修輔はいつものように台所に立つ。
「はい、味噌汁。
パンじゃなくて、ご飯がいいんだろ?」
エクは背筋を伸ばして座り、目を細めた。
「……これが、毎朝続くのか?」
「嫌なら言えよ?」
「嫌なわけがない。
こんな幸せがあっていいのかと思うほどだ」
「大げさな……」
でも、味噌汁を飲んだエクの表情は本当に嬉しそうで、修輔の胸にも温かいものが広がった。
「修輔」
「ん?」
「“いただきます” は、あなたと一緒に言いたい」
「あ、ああ……」
「……いただきます」
二人の声が、同じ朝の空気に溶けていく。
(あぁ……これだ。
俺が求めてたのはこういう生活なんだ)
家具を運び込み、部屋はすっかり“ふたりの家”らしくなった。
新しいソファで並んで座っていると、エクがぽつりと呟いた。
「今日は……特別な日だと思わないか?」
「まぁ、そうだな。
これからずっと一緒に暮らす最初の日だし」
エクは修輔の手をそっと取った。
「修輔……」
「ん」
「あなたが隣にいると……安心する」
「……俺もそうだよ」
ふたりはしばらく黙って寄りかかっていた。
その静けさすら心地よい。
やがてエクが立ち上がり、
新しいダブルベッドへと歩く。
「修輔」
「なんだよ」
「……一緒に来てくれ」
その言い方が、
やわらかくて、甘くて――胸がじんわり熱くなる。
「……ああ」
ふたりは並んでベッドに腰を下ろし、布団に潜り込む。
「広いな」
「ふたりで眠るための広さだ」
「お前、そのまんま言うなよ……恥ずかしいだろ」
「……恥ずかしいが、嬉しい」
エクはそっと腕を回し、気遣うように問う。
「抱いてもいいか?」
「いいよ」
抱き寄せられた体が温かくて、胸の奥が溶けていきそうだった。
「修輔」
「……ん」
「あなたと暮らせて……本当に幸せだ」
「……俺もだよ。
ここが、お前と俺の“家”だ」
エクはゆっくりと額を寄せ、軽く唇が触れるくらいの優しいキスを落とした。
「おやすみ、修輔」
「おやすみ、エク」
その夜、ふたりの呼吸が同じリズムで重なり、新しい生活が静かに始まった。
了